呼吸法 『 汝自らを知れ 』Breathing method : Know Thyself
ものの勢いというものは、昂じて来ると、行く所まで行って勢いが破裂する迄は収まらないようになる。大きな破壊の前には社会は喧噪の渦が巻き大きく混乱する。今、日本、世界を見ると、第三次世界大戦が起こる勢いが昂じて来ているように見える。私には、最早避けがたいようにも思えるのだが。ここで少しく気を落ち着けて自分を振り返ってみよう。
人は動機に基づき、動機を実現すべく行動する。人の意識は重層構造に成っており、最表層の意識は五感を通して物的世界に向かい、そこで得られる情報について思考する。その時には粒子型の思考が働く。詰り、矛盾律、排中律に基づいた論理的思考を駆使して動機を正当化する。そしてそこで作られる論理的作物によって動機を覆い隠す。他者に隠すと同時に、自らにも隠す。自分の動機を顧みるより、ひたすら対峙する者を否定することに思考を注ぎ込む。言葉を弄し、その言葉に自ら翻弄される。これが弁論であり、利己心の産物である。その愚を市民に訴え、「汝自身を知れ」と語り掛けたのがかのソクラテスである。自らの利己的動機に気付き、その動機を治める術を会得せよと呼びかけた。しかしアテネ市民はそれを理解し得ず、ソクラテスを葬ってしまった。日本社会の現状を見て、さながら古代アテネの様であり嘆かわしく思う。
表層意識の奥に有って表層意識に働きを要請するのが動機である。動機の意識層では、粒子型論理に依る思考とは別の、意識の共鳴に基づく波動型認識が働く。意識には自らを見る働きが有る。「汝自らを知る」とは、この働きが意識の中に有る動機と共鳴し動機それ自身に気付くことである。別な表現をすれば「直指人心」である。これは波動型認識の一つの方式であり、禅はこれを求めて只管座禅を組み自己に向き合う。
動機は自己の中に有る訳だから、本来ならば意識はおのずから動機が見える筈である。しかし意識の中には障りが在り、また埃が浮いている。動機を覆って見えなくする。これが所謂心の歪みであり、大まかに言って、障りとは価値観であり、埃は利己心である。そしてそれには感情が伴っている。この感情が意識に働きを強要し或いは制約する。
自らを知るのを妨げるのが心の歪みである。これが心内の見通しを悪くし、肉体的には呼吸や姿勢の偏りと現れる。呼吸法は、この歪みを吐き出し、心の中を良く見透せるようにしようとする。姿勢を整え、大きく息を吐き十分に吸う。これを繰り返す。と言っても、無理に大きな呼吸をする必要はない。身体の内に不自然を感じるような呼吸は、却って呼吸を歪め心をいびつにしてしまう。息が体幹を通るように意識しながら、体に馴染むようにゆっくりと呼吸する。心の歪みを取り除きながら、一段一段と深く自らを知って行くのが呼吸法を続けて行く過程である。身体や心に固着した歪みは一朝一夕に除けられるものではない。
ところで、ややもすると私達は、瞑想と言って歪みや埃を払わず、いきなり心の奥へ沈潜しようとする。これはあまり成果を生まない。せいぜい自己満足が関の山だろう。瞑想には、よほどの指導者の下で行わないと、邪道に堕す危険が有る。「敢えて求むる勿れ」という言葉が有る。呼吸法は只管心の歪み埃を吐き出すことに意を注ぐ。心の歪み埃が除かれれば、おのずから心は見透せるようになるだろう。専門に修行する訳ではない普通の人には、呼吸法は取り組みやすく間違いのない「自らを知る」為の方法ではないだろうか。
アテネ市民が、毒杯を以ってソクラテスを葬るという愚を犯さないようにし得る為には、個々の市民が「自らを知る」ということを会得する必要があっただろう。
Breathing method : “Know Thyself”
When the momentum of things come to an end, it will not subside until it goes where the momentum bursts. Before a major explosion, society is engulfed in a whirlpool of noise and chaos. Looking at the world and Japan of nowadays, it seems that the momentum of the World War Ⅲ is gaining momentum. It seems inevitable to me. Let’s stay for a moment, and reflect on ourselves.
People act based on their motives to realize their motives. Human consciousness has a multi-layered structure. Catching the physical world’s information with the five senses, we think about the material world. Motive is located in the depths of the superficial consciousness. It requests upper consciousness to work logical thinking. Consciousness has the function to see itself. And to be aware of its motive is called “know thyself”.
As the inside of the mind is within itself, it should be visible naturally. However, there are disturbances in the consciousness, that is distortion of mind and dust floating in the space of consciousness. The distortion is the frame of personal values and the dust is selfishness. Moreover they are accompanied by emotions. These emortions force and constrain the movement of the mind. And we becom able to control emortions by knowing our own motives.
Distortion of the mind appears in unbalanced breathing and posture. Breathing exercise trys to exhale this distortion and dust. Prpare your body, exhale largely, and inhale thoroughly. Rpeat this breathing. However, you don’t need to force it to be large. Breathing that feels unnatural in the body distorts the breath and wraps the mind. Breathe slowly feeling that the breath passes through your body. While exhaling the distortion and the dust, we examine ourselves deeply step by step. Distortions fixed to the mind and body cannot be eliminated easily. It takes long time to do it.