私達は、身体を動かすのは筋肉であると思っていて、動く時あまり呼吸を見ない。次のような実験をしてみよう。Aは腕を少し曲げて差し出し、その腕を曲げ伸ばしする。その時BはAの腕の動きを抑えようとするのである。

 Aが腕を少し曲げて差し出し楽に呼吸していると相当の力でもBはAの腕を曲げられない。(画像 1)

 まず腕を伸ばしてみよう。Aは初めの腕の位置から力を籠めて腕を伸ばそうとする。Bは息を詰めてAの腕を抑えようとする。これは力比べである。今度は、Bは同じようにして、Aは上体を楽にし息を吸いながら腕を伸ばしてみる。そうすると力を籠めた時より楽に腕を伸ばすことが出来る。(画像 2)

 今度は腕を曲げる方である。Aは初めのように腕を差し出し、力を籠めて曲げようとする。Bは上と同じように息を詰め力を籠めてAの腕を抑える。次にAは息を吐きながら同じことを試してみる。そうすると息を詰めた時より楽に腕を曲げることが出来る。(画像 3) 

 これは意外なようであるが人体を風船のように想像してみると良く分かる。風船は空気を入れると膨らんで腕が伸び、空気が出れば腕は縮む。これは空気圧の働きである。人体も同じで、息を吸えば腕は伸び、吐けば腕は縮む(曲がる)。ここで使われる力を『 呼吸力 』という。息を吸う時身体は虚の状態になり動けないとよく言われるが、息を吸う時も身体を働かすことが出来るのである。ただ吸い方が問題で、楽な滞らない呼吸で吸うのである。吐くのも同じで滞らない呼吸で吐く。息を詰めてしまうと身体が固まって呼吸力は使えない。