私の体感を基にして考えてみる。呼吸には息を吸う為の弁と吐く為の弁がある。息を吸う時は、吸う弁が開き吐く弁は閉じる。吐く時は、吸う弁は閉じて吐く弁が開く。息を止めるには、吸う弁吐く弁共に閉じる。呼吸が外れるというのは両方の弁が開いてしまった状態である。呼吸を外すとは、相手の両方の弁を技術的に外すことである。これが「合気」であると私は思います。特に呼吸を強調して私は「呼吸合気」と言っています。
呼吸を外す易しい方法は、相手の手を前へ伸ばすことである。
まず受けは腕を差し出す。投げは相手の手首を自分の親指と人差し指、中指で摘まむように挟む。(画像 1)
次に、受けの手首を少しだけ浮かすようにしながら前へ引き出す。この時投げは軽く息を吸いながらやるとやり易い。実際は撫でるようにする。そうすると受けの呼吸は外れる。(画像 2)
呼吸が外れると受けの手を楽に下ろすことが出来る。ここで投げは息を吐いている。(画像 3)。受けの手を左右に動かすことも出来る。
受けの呼吸を外すことが出来れば、相手とぶつかることなく相手の態勢を崩し投げることが出来る。
相手の手を前に引き出す時、受けの手を握らないことが大事だ。握ると筋肉がぶつってしまう。またよくやるように小指を締めて相手の手を持つと自分の肩が固まって息が詰まる。これでは呼吸力を使えない。皮膚に触れるのである。皮膚の末梢神経は呼吸と繋がっているのではないのだろうか? こんな経験はありませんか。街を歩いている時、フッと微風が頬を通り過ぎると、気持ちが途切れ、思わず立ち止まる。この時呼吸が外れているのである。受けの呼吸を外してから受けの肩を下ろせば、受けは体勢を崩して倒れる。
稽古では、よく呼吸を外す代わりに息を詰める。受け投げ共に息を詰めてしまう。これでは力比べである。
投げが呼吸力を発揮するには、息を吐く弁と吸う弁を身体の動きに合わせて使い分けねばならない。基本は、身体を広げる時に息を吸い、縮める時に息を吐く。受けは、身を護るため息を詰めがちであるが、呼吸が外れている状態では外れた呼吸を取り戻そうと自分の呼吸を追い駆けると言えよう。これを外から見ると投げが受けを弄んでいるように見えたり、また八百長に見えたりする。呼吸を見ないと本当の所は分からない。( 但し、これは合気道上級者の話で、簡単にそこまで行ける訳ではない。だからこそ稽古するのである。私もまだまだそこまで行ってない。合気道はそんなに簡単ではない。誤解してはいけない。)